
✦ はじめまして! まずは簡単に自己紹介をお願いします。
こんにちは、チョン・セウンです。
✦ 今回、EP『Brut』のリリースおめでとうございます。最近の近況やアルバムについて教えてください。
今回リリースしたEP『Brut』には、全5曲が収録されています。このアルバムは、単なるカムバックというよりかは、まるでデビューのような気持ちで臨んだ作品なんです。
“Brut”という言葉には、“加工されていない”とか“ありのまま”といった意味があるのですが、このタイトルを通して、「自分の音楽の“本質”って何だろう?」ということを改めて考えるきっかけになりました。そんな僕なりの答えを詰め込んだ一枚になっています。
✦ 『QUIZ』から約1年4ヶ月のブランクがありましたが、その間はどのように過ごされていたのでしょうか?
まず、この期間にはいろんな変化がありました。変化を通して、人生に対する視野がぐっと広がった気がします。個人的にもたくさんのことを感じ、考えた時間でしたね。
それから、所属事務所も移籍して、新しいスタッフの方々と信頼関係や親しみを築きながら、お互いを知っていくような日々を過ごしていました。静かだけど、とても充実した日々だったと思います。
✦ 今回の『Brut』というアルバムを制作するうえで、特に意識したキーワードや、この作品ならではのストーリー、サウンド的な特徴などがあれば教えてください。
自分の“好き”をたくさん詰め込みたい、という思いがまずありました。そして何より、自分の感情にしっかり向き合って、集中して制作したアルバムです。
✦ 今作でも全曲の作詞・作曲に参加されていますが、その中でも特に聴いてほしい1曲はありますか?
本日〈Kitto LIVE〉で披露する「Eternally」と「goodbye」を除くと、「ナラニ(나란히)」というトラックがおすすめです。この曲には特に思い入れがあって、何より今の季節にぴったりな楽曲だと思います。
✦ 「ナラニ」はどんな雰囲気の曲ですか?
この曲は僕自身がとても大切にしているので、ひと言で説明するのがもったいないような、そんな気持ちもあります。でもあえて言葉にするなら、“イージーリスニングに近い、すごくロマンチックな一曲”ですね。
✦ ロマンチックというと、今回のアルバム全体もそういうムードなのでしょうか?
そうですね、とってもロマンチックな仕上がりになったと思います。
✦ 5月という春の季節にぴったりの、ロマンチックな空気をたっぷり感じられるアルバムですね。最近出演された「緊急合同フェスティバル」では、過去の楽曲と先行公開曲「Eternally」を続けて披露されましたが、チョン・セウンさんがぐっと成長したというか、すごく成熟した印象を受けました。「Eternally」という曲について詳しく教えてください。
実はこの1年4ヶ月で急に大人になったわけではないと思うんです(笑)。ただ、この曲自体が持っている雰囲気がとても落ち着いていて、成熟した感じを自然と引き出してくれるような楽曲なんです。曲が“成熟して見せてくれる”と言えばいいんでしょうか。
✦ 『QUIZ』のときはダンスもあり、ヘアスタイルも短くて、全体的にキュートな印象が強かったですよね。でも今回は、シャツにネクタイといった装いで、ぐっと雰囲気が変わりました。「Eternally」以外の収録曲でも、その“成熟”を感じられるのでしょうか?
そうですね、これまで僕を見てきてくださった方々には、「すごく大人っぽくなったな」と感じていただけるかもしれません。
✦ セウンさんを昔から知っている人は、2013年の『K-Popスター』や2017年の『PRODUCE 101 シーズン2』からご存じの方も多いと思いますが、今回初めてセウンさんを知った人にとっては、“新しいシンガーソングライターの登場”と映るかもしれません。2013年、2017年、そして今とで、音楽に対する姿勢に変化はありましたか?
2013年に『K-Popスター』に出ていた頃は、まだ音楽とちょっとぎこちない関係だった気がします。ちょうど音楽という存在を知り始めた時期で、“親しくなっていく最中”といった感じですね。
2017年には少し距離が縮まったけれど、その後また一度、遠ざかった時期もありました。でも今は、音楽と僕がお互いを少しずつ理解し合える関係になってきたというか。まるで、気の合う友達みたいな、そんな親しさがある気がします
✦ その“距離があった時期”とは、ケンカしたみたいな感じですか?
うーん……音楽っていう友達はずっとそこにいたんだけど、僕のほうがちょっと壁を感じて、自然と距離を取ってしまった感じですね。ひとりで拗ねてた、みたいな(笑)。
✦ では、もう一度音楽と距離を縮められたきっかけは?
『K-Popスター』に出場するまでは、まさか自分が音楽とこんなに親しくなれるとは思ってなかったんです。ただ、単純に楽しくて面白いから一人で歌っていただけだったんですよ。でも実際に出演してみると、想像もしなかったプレッシャーや責任感が一気に押し寄せてきて、すごくストレスも感じました。楽曲制作もサバイバルというシステムに合わせる必要があって、そのプロセスそのものを楽しめていなかったんだと思います。
そんな中で、一度音楽から離れた時期がありましたが、その後、少しずつまた“作ること”の楽しさを見つけていって。それが、もう一度音楽と向き合おうと思えた大きなきっかけだったと思います。今はずっと勉強を続けながら、音楽にもう一歩近づけた気がしています。
✦ たしかに、当時はまだ10代でしたし、今とは比べ物にならないくらい多くの重圧があったんだろうなと思います。前作『QUIZ』のタイトル曲には、“自我探し”や“個性”といったメッセージが込められていました。『QUIZ』が「疑問を持つセウン」が“答え”を探す旅だったとすれば、今回のアルバムでは、どんな“答え”を見つけたんでしょうか?
『QUIZ』は、「世の中には“正解”が多すぎるけれど、それに無理に合わせる必要はないよね」というメッセージを込めた作品でした。だから、逆に“正解がない”ことを前提に、自分の好きなもの=本当の趣味や志向をちゃんと見つけて、明確にしていきたいという気持ちがどんどん強くなったんです。
“正解がない”なら、むしろ自由にやっていいんじゃないかって。そうやって模索してきた中で、ようやく自分が何を好きで、どんなものを目指したいのかが分かってきた。その“自分の好き”という答えを持って取り組んだのが、今回のアルバム『Brut』です。たぶん今作を聴けば、「あ、これがチョン・セウンの趣味・趣向なんだな」とはっきり伝わると思います。
✦ 『QUIZ』では“自分探しの旅”が描かれていましたが、『Brut』ではその存在を確立し、自分の“好き”を表現する作品になっているわけですね。今回の『Brut』では、どのようなチョン・セウンが見られるのでしょうか?
今までお見せしたことのない姿です(笑)。もちろん、自分の中にはもともとあった一面なんですが、それをこうやって“見せる”となると、今までの僕とはちょっと違って見えるかもしれません。なので、どんな反応が返ってくるのか楽しみです。
それから、感情面では、これまであまり表に出してこなかったような、ちょっと影のある感情やマイナーな気持ちを描いた曲もあって。そういった面を新しく見せることで、また違った魅力を感じてもらえるんじゃないかなと思っています。
✦ “シンガーソングアイドル”という肩書きにも変化があるのですか?
うーん、それも含めて“僕そのもの”なので、なくなるわけじゃないです。今もその要素はあるし、わざわざ手放すつもりもないです。自然体の僕っていう感じですかね。
✦ 今回のステージも楽しみです。これまではダンスを取り入れたパフォーマンスや、少年らしいビジュアルが印象的でしたが、今回は成熟したセウンさんの、よりナチュラルな姿が見られるのではないかと期待しています。
そうですね、たぶん以前のようにピンクのスーツにフリルのシャツを着ることは、もうないと思います(笑)。それは確かです。
✦ アルバム『Brut』のタイトル曲「goodbye」はどのような曲なのでしょうか?
「goodbye」は、“すべての季節が冬だった”という言葉を淡々と語るような、そんな楽曲です。いっしょに過ごしたすべての季節が冬のようだった、という別れの情緒を描いています。
✦ その“別れ”は恋人同士の別れ、ということですか?
恋人同士かもしれないし、世の中にはいろんな別れがあるじゃないですか。僕としては、あくまで“別れ”というテーマで表現したので、あとは聴く方それぞれに自由に解釈してもらえたらと思っています。
個人的に、冬という季節は別れに近い感覚があって。でも実は、すごく寒いからこそ誰かと寄り添いたくなる、いっしょにいたくなる季節でもあるんですよね。ほんの紙一重の違いで。でもこの曲で描いたのは、“別れの冬”です。
✦ 本日のKitto LIVEでは「Eternally」と「goodbye」を披露されましたが、その理由を教えてください。
この2曲は今回のアルバムの軸となるような、核となる楽曲なんです。だからこそ、代表的な2曲として皆さんにお聴かせしたかったんですよね。実はこの2曲、トラックの並びでも続いているんです。その流れがとても美しくて、ライブでも一緒に聴いていただけたらいいなと思って、この2曲を選びました。
✦ 「Eternally」がシンプルでモノトーン、少し切なさを感じる曲だとしたら、「goodbye」はさらに深く潜っていくような印象を受けます。音楽と距離ができたり、また近づいたりという時間を経てきたセウンさんにとって、今“音楽”とはどのような存在ですか?
以前、ファンミーティングでファンの方に即興で「音楽とは何か?」と聞かれたことがありました。そのとき自然と口をついて出たのが「音楽は、砂漠の中で与えられた一滴の水のような存在」という言葉でした。今でもその気持ちは変わっていません。小さい頃からたくさんの音楽を聴いて、たくさんの慰めや力をもらってきました。だからこそ、今も続けられているのだと思いますし、やっぱり“砂漠の水”のような存在ですね。
✦ 今回のアルバム制作の中で、最も時間をかけて悩んだ曲や、予想外の展開になった曲があれば教えてください。
実は、アルバムには収録されていない“隠された曲”が一つあるんです。制作中までは一緒に準備していたんですが、最後の段階でアレンジがどうしても納得できなくて…。6曲構成のアルバムとして考えていたので、完成形としての流れにも合わない気がして、結果的に外すことになりました。自分でも予想していなかった展開でしたが、いつか必ず皆さんにお届けしたいと思っています。
✦ それは皆さんとても気になると思います!
前作ではソヌ・ジョンアさんやパク・ムンチさんといった豪華なプロデューサー陣が参加していましたが、今回のアルバムにはどんな方々が参加されたのでしょうか?
今回は、今まで一度も一緒に作業をしたことがない方々と編曲を行いましたし、ミキシングも初めてご一緒するエンジニアの方々と取り組んだんです。様々な新しいタイプのコラボレーションができたのが今回の面白いところでした。制作する過程自体が本当に楽しかったですね。
✦ 技術的にもいろんな変化があったんですね。
僕自身がプロデュースを担当しているので、一人で作っていたら思いつかなかったであろうアイディアやサウンドがたくさん取り入れられていて、本当に良いコラボになったと思っています。今回のアルバムを聴いていただければ、そうした部分にも気づいていただけるんじゃないかなと。
✦ 6月5日にはコンサートが予定されていますね。タイトルと簡単な紹介をお願いします。
「Bittersweet」というタイトルで準備していて、今回のアルバムの延長線上にあるような内容になりそうです。今回の収録曲を中心にお届けする予定ですし、人生初の小劇場での長期公演なので、今からとても緊張しています。
✦ 全8回というのは、プレッシャーもあるのでは?
もちろんプレッシャーはあります。初めて挑戦するスタイルの公演なので、どんなふうに進めていけばいいのか、僕にとっては未知の領域です。でも、何よりも大切なのは、ファンの皆さんに頻繁に、そして近くでお会いしたいという想いから始まった企画なので、皆さんが楽しんでくだされば、それだけで僕は満足です。
✦ 2025年に「必ずやりたいこと」や「特別な計画」があれば教えてください。
今年は、もう一枚シングルを出す予定です。デビューしてからの活動を振り返ってみたら、シングルのリリースが意外と少なかったんですよね。だからこそ、今年はもっと精力的に活動していきたいと思っています。いろんな面白いイベントを用意しながら、走り続けるのが今年の目標です。
✦ 最後に、Kittoをご覧の皆さんへメッセージをお願いします。
Kittoをご覧の皆さん、今回のアルバム『Brut』をぜひ楽しみにしていてください。感情がしっかり伝わるような、没入して聴ける楽曲が揃っているので、皆さんにしっかり届けば嬉しいです。ぜひ楽しんでくださいね。
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