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コーヒーで人と世界を繋ぐチェ・ワンソン代表

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2024.06.29
Kapecchang
Kapecchang韓国バリスタ資格をもつ日本人

聖水洞 Brewing ceremony

コーヒーラーバー達の中でも、今や大人気カフェ巡りエリアとなった聖水(ソンス)洞。

ここまでホットになるコロナ前の2019年、2号戦ソンス駅近くのオフィスビルの一階に誕生したBrewing ceremony(ブリューイング・セレモニー)は、韓国では珍しくアメリカーノの無いブリューイングコーヒー専門店です。

 

店内のプロバット焙煎機でロースティングしたコーヒー豆をブリューイングセレモニーならではの表現方法でお客様にお伝えし、注文後には専門のバリスタの手によって1杯1杯ドリップされていきます。

多い日には1日200杯ものコーヒーを淹れる日もあるとか・・・! 

こちらのオーナーのチェ・ワンソン氏は元舞台俳優で、ブリューイングセレモニー(以下、ブセ)のオープンの2日前まで俳優として舞台に立っていました。

大学で演技を学びながらアルバイトをしたカフェでコーヒーと出逢い、卒業後にも俳優として活動していましたが、両親と約束した『30歳まで自分のしたいことをする』というリミットが近づいてきた28歳。
彼が選択したのは、演技ではなくコーヒーの道でした。

一見関連性のなさそうな2つの職業ですが、俳優としての経験があってこそ今のようなブリューイングセレモニーの形が出来上がったと話されます。

チェ・ワンソン氏の歩んできた人生が溶け込んで色濃く抽出されたブリューイングセレモニー今回はその人気の理由と、世界中の老若男女を惹きつける彼自身の魅力に迫ります。

 

 

 

 

コーヒーはLikeであり、Loveではない?

僕は『コーヒーという媒体を通して広がる世界』がすごく好きなんです。

それはコーヒーを飲みながらおしゃべりをする事だったり、カフェでゆっくり本を読む事だったり、コーヒーがきっかけで海外に友達ができたりと、些細な事でも気分が良くなる瞬間が多いのがコーヒーの魅力だと思います。たまに「本当にコーヒーを愛しているんですね」と言われるのですが、その度に「そんなことないんです!」って答えたりもします(笑)。

なぜなら好きな事を仕事にする大変さや上手くいかなかった時の悲しさは俳優時代に多く経験しましたから・・・コーヒーはマラソンのようにペース調整をしながら、程よい距離感を保って、今後も長く付き合っていきたい存在ですね。

そのため最近では美術館に行ったり、愛犬と散歩をしたり、本を読んだりと、わざとコーヒーに関係のない事とも接するようにして気分転換をしながら、常に良い気分でコーヒーと向き合っています。

 


 

スローガンの『コーヒーを通してできる多くの事』とは?

我々ブリューイングセレモニーのスローガンは【私たちはコーヒーを焙煎します。私たちはコーヒーを淹れます。私たちはコーヒーでもっと多くの事ができると信じています】です。

数年前、ソウルカフェショーのために韓国を訪れたニカラグアのコーヒー農園の生産者さんが、自分が栽培したコーヒーをカフェで楽しむ韓国人のお客さん達を嬉しそうに眺めている姿を見かけました。 

彼らと会話をしながら「僕達がコーヒー農園についてよく知らないのと同じように、コーヒー農園の生産者さん達は自分のコーヒーがどのように消費されているのかを知りたかったんだ」と気づき、その後すぐに彼らのコーヒーを飲んだお客さんやそのコーヒーを淹れたバリスタ達の想いを手紙やビデオレターに撮って編集・翻訳してコーヒー生産者さんに送り、お客様には農園の様子を紹介するという交流プロジェクトを行いました。

今までは僕達バリスタだけがお客さん(消費者)と繋がっていましたが、コーヒー生産地の情報がわかるスペシャルティコーヒーと言う存在は、生産者と消費者を繋ぎ、さらにはコーヒー農園とカフェの互いの持続可能性を高める媒体として有効であり、その端と端を繋ぐ役割をするのも僕たちバリスタの役目だと感じました。

 

また先日は台湾からソウルを訪れたコーヒー焙煎師さんと仲良くなり、お互いに焙煎した豆を互いのカフェで紹介し合うゲストビーンイベントを開催したり、日本から韓国に進出した有田焼とのコラボイベントでは特別ブレンドのコーヒーを作って有田焼のカップにコーヒーを淹れに行ったり、カフェが閉店した後には深夜まで一人で残って焙煎をしたりと毎日大忙しのワンソン氏ですが、いつも笑顔を絶やさぬ彼の周りには世界中から笑顔の人々が集まります。

 

 

どうしたら次々とプロジェクトのアイディアが湧いてくるのですか

僕が考えたというよりは、自然な流れでする事になったプロジェクトばかりなんです。

個人的に『マーケティング』と言うとお客様を操作するようなイメージがあるので好きじゃなくて・・・その代わりにお客様からのフィードバックや意見をしっかり聞いて、それにお答えしたり、ブセの仲間達と話し合ったり、周りの方々を喜ばせたいという想いでプロジェクトをこなしてきました。

昔から韓国の芸能人が成功して多額の寄付する姿を見て、僕も俳優として成功したらそうしたいと思っていたのですが、慈善活動って実はいつでもできるんですよね。それに気づいてから、大学時代には煉炭運びのボランティアであったり、洪水の被災地へのサポートであったり、髪を長く伸ばしてヘアドネーションをしたり、少額でも自分ができる範囲ではじめるのが大事だなと思い、それが今でも続いてブルーイングセレモニーのプロジェクトの一部にもなっている感じです。

かわいそうな人を助けてあげるんだという考えではなくて、困った時はお互い様じゃないですか。

 現在ブリューイングセレモニーでは、日本からワーキングホリデーで韓国に来た日本人のバリスタさん2人が働いてくれていますが、韓国生活をする上でも出来るだけのサポートはしたいと思っています。日本人だからとか外国人だからとかじゃなくて、チェジュ島や地方からソウルに来た方々だったとしても、困っている方がいたら僕は手を差し伸べますよ。

たまに「慈善活動するためにコーヒーを売っているの?」と聞かれたりもするのですが、そんなんじゃなくて(笑)コーヒーをきっかけに、こんな事もあんな事もできるんだっていうのを知ってもらえたら嬉しいです。

 


 

ブセを訪れたお客様に、おすすめしたいコーヒーがありますか 

僕達を信じて、いつもとは少し違うニュアンスのコーヒーにチャレンジしてみて欲しいです。

例えば「酸味のないコーヒーが好きだ」と言われたら、僕はこのように2つのコーヒーをご提案します。

「こちらのコーヒーは酸味の無いコーヒーで、おそらく今まで飲んできたコーヒーと似ていると思います。

でも僕はこちらの(別の)コーヒーを飲んでみて頂きたいです。柔らかな酸味はありますが、後味がナッツのように香ばしく、香りがとても良いのでおすすめです。」「もしお口に合わなければ、ご希望通りのコーヒーを淹れなおしますので、遠慮なくおっしゃって下さい。」ともお伝えしますが、意外にも反応が良くて・・・新しい体験が良い記憶として残ると、お客様は次にお友達やご両親を連れてきて下さり「社長の事を信じて頼んでみて!」って言ってくれるんです(笑)

以前はお客さんのお好みをお聞きしたら、その通りのコーヒーをおすすめしていましたが、そうすると『他の店と特に変わらない普通の店』という印象になってしまいかねないんですよね。そんなイメージを脱却するためには高価で珍しいコーヒー豆を使う方法もありますが、僕はそれよりは誰でも気軽に楽しめるコーヒーを提供したいので、このように2種類のコーヒーをご提案する方法に行きつきました。

 


 

誰でも気軽に楽しめるコーヒーとは

大学卒業後にコーヒーの道に進むと決めたものの、最初は自分がどんなコーヒーが好きなのかもわかっておらず、手探りでコーヒーの勉強を始めました。東京のカフェを巡った時には、美味しいと感じたお店のグラインダーはdittingだと言う事がわかったり、2年間みっちり焙煎を学びながら自分の好きな味を模索し、僕は韓国料理で言う平壌冷麺みたいなクセがなくて飲みやすいコーヒーが好きなんだと気づいたりもしました。

僕はコーヒーも人間みたいだなとよく思います。
外見がイケメンや美人じゃなかったとしても、素敵な人ってたくさんいるじゃないですか。

コーヒー豆も必ずしも点数が高い高価な豆だけが良い豆だとは思っていなくて、その豆を僕達焙煎師やバリスタがどう捉えてどう伝えるかも大事だと考えています。生豆を買って焙煎してみたら、予想していた味とは違う味になる事もあります。そんな時にはその豆のいい部分を出来るだけ引き出すように焙煎の仕方を変えながら、販売する時にはどのように表現するか説明の仕方を考えるんです。「ブラジルだからこんな味です」とか「エチオピアだからこんな味です」だけじゃなくて、自分たちの言葉と表現方法でお客様にコーヒーの魅力を伝えたいので、言葉やジェスチャーにも気を配っています。

 



ブセのインテリアがユニークな理由

インテリアのデザインを業者さんに伝えるときも、僕は体全体のモーションでイメージを伝えました。

店内と外のテンポ感が異なるような空間を作りたかったので、店内の様子と外の様子のイメージを言葉と全身の動きで表現したら、真っ黒いガラス張りの試案ができてきたんです。

正直、出来上がったイメージを見てびっくり。このまま進めて大丈夫かな、が最初の感想でした(笑)
でも僕の意図した事がすごくよく伝わっていて、今では満足しています。

外が明るい昼間には店内は真っ暗に見えますが、中に入ると明るくて、夜に外が暗くなると中の雰囲気が暖かくぼんやりと見えるようになるんです。

また、お客様はバリスタがコーヒーを淹れるカウンターに背を向けずに座ってもらえるよう、テーブル席は一切無くし、壁に沿った椅子だけを置くことにしました。コロナ禍で距離の制限ができてからはスツールを導入しましたが、それまでは皆カウンターの方向を見て座る劇場のような形でした。

なぜならブリューイングバーは演劇で言う舞台であり、バリスタは役者のようであってほしかったからです。

ブリューイングセレモニーがオープンした2019年は、ソンス洞にブルーボトルや豪華な巨大カフェが多く出来た年でもありました。

でも僕は逆にできるだけミニマルな空間にしたくて・・・お金がなかったのもありますが(笑)可能な限りの無駄を削り落として、インテリアに使う素材も極力シンプルにした結果、素材の本質を活かした木と岩と鉄だけの空間が完成しました。

 

 


 

一度行った人は、もう一度行かずにはいられないカフェ

禅や侘び寂びを感じさせるような無機質なインテリアとBGM。

一見冷たくも感じるような空間に、ワンソン氏の情深く穏やかで優しいお人柄と、そこに集まった家族のように仲が良いチームメンバーの和気藹々とした雰囲気が心地良いカフェ、ブリューイングセレモニー。

多くの友人から「一度行った人は、もう一度行かずにはいられないカフェ」と紹介された理由に頷きながら、今日も美味しいコーヒーをいただきます:)

 

 

브루잉 세레모니(Brewing ceremony)
📍 ソウル 城東区 延武場 五街キル22-1
🕰 毎日 11:00−21:00

 

※こちらの記事は2024年5月に作成されました。営業日や営業時間が変更になる可能性がありますので、行かれる前には必ずお店のSNS等で最新情報をご確認ください。ご感想やご質問、リクエスト等はインスタグラムのDMでお待ちしております! 

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